加藤敏先生の「レジリアンス 文化 創造」を読む

明日は天野良平先生をお迎えして、藤沢の聞き書き仲間で語り合う予定。
 わたくしは天野先生のご要望により、レジリアンス、社会的処方、生活モデルについて話す予定。
 改めて加藤敏先生編著「レジリアンス 文化 創造」(金原出版)を読み返している。
 深い内容。読み返すたびに新しい発見がある。
 オイディプス王、それに続くコロノスのオイディプスもレジリアンスの文脈で眺めるとずいぶん違う印象がある。
 
第三章(加藤敏先生担当章) 現代人のヒュブリス(思い上がり)外傷後成長
I 外傷後成長
最近アメリカで、ストレスやトラウマを跳ね返すレジリアンスを重視する動きが助長されている。
アメリカ心理学会は「黒人の子ども、青年のレジリアンスと強さ」と題した研究に取り組んでいる。
背景として、ストレスないしトラウマに晒された際、ストレス関連性障碍やPTSDの顕在発症に至らない事例が、かなりあることが知れてきた。
ストレスに打ち勝つ力、また人格的成長を促す力、また過程としてのレジリアンスの内実を明らかにする研究が増えている。
これまで医学ではリスク因子の解明に力を注いできたが、今日、病気、困難な状況を跳ね返す レジリアンス因子の解明が要請されている。
東日本大震災と福島原発事故
可能性のある精神病理現象
木村敏フェストゥムから
うつ病 もはや取り返しのつかない過去への悔み:ポスト・フェストゥム(祭りの後)
統合失調症 未来への可能性の先走り、予兆への過敏:アンティ・フェストゥム(祭り前)
前者は親族、仲間の死等による決定論的な喪失によるポスト・フェストゥム的な不安、後者は今後いつ放射能の被害に襲われるかもしれないというアンティ・フェストゥム的不安で、人々は二種類の質を異にする不安に晒される。
トラウマの問題に精神医学において最初に周到な理論を提出したのはフロイト。病態レベルでは外傷神経症に焦点が当てられた。今日のPTSD概念の先駆け。
外傷神経症概念とPTSD概念の大きな違い。PTSDは操作的診断ための単純な因果関係の図式で病態が規定されている。
外傷神経症は人間存在自身の基本的なあり方を指し示す。戦争といった際立った恐怖の体験によって心の装置の表層の刺戟保護が破られ、過大な刺激量が心の装置へと入り込む。このため、注意喚起の信号として不安が生じる。
フロイトは人間にとって外傷の典型的なものは出生であると考えた。
また、太古の重大な外傷的体験。すべての女性を所有した原父殺害。エディプス・コンプレックス。
II 「肉体への配慮」の増大と「魂への配慮」の減少・原発事故
 人間の関心領域は大きく二つに区別
肉体への配慮
魂への配慮
 ポストモダンの時代になりマルクス主義や民主主義、公認の宗教などの「大きな物語」の退潮、その穴を埋めるように医学及び科学への信頼が増している。
 科学研究の進歩は、遺伝子解析の現在の結果が良い例であるが、かえって不確定要素があることを示唆している。AGCTの四塩基から構成される情報は、自然環境及び社会環境との相互作業により発現するというコンテクスト依存機能が支持されている。
 DNAと自然・社会環境を加えた三重らせんパラダイム
III ヨブと現代人-神、大自然に対する畏れの感情
 旧約聖書のヨブ記。裕福で人格的にも優れたヨブに、突然予期せぬ不幸が襲いかかる。財産を失い、全身が皮膚病になる。ヨブは神に向かい「なぜわたしをとがめ立てし、過ちを追及なさるのですか」と災難の理由が分からない旨の不満を表明する。
 神からは返答はなく、その代わりに、神はヨブに彼の傲慢な態度を非難する言葉を浴びせる。「これは何者か。知識もないのに、言葉を重ねて神の経験を暗くするとは」
 この言葉を聞いたヨブは「私には理解できず、私の知識を越えた驚くべき御業をあげつらっておりました」と謙虚になり反省する。
 ヨブは元の生活に戻ることができた。
 ヨブ記では、人間存在がこの世で生きていることに由来する原罪性が問われる。 
 人はこの世に生きる以上、構造的に負債を負うあり方をしている。
 科学的真実こそが絶対的な真理であると確信した現代人は、大自然、ないし神に対する畏れとおののきの敬虔な感情を廃棄した。現代人のヒュブリスである。
 外傷後成長は人間のヒュブリスと構造的負債への内省が条件である。
V 生贄の問題
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